VESTが提案する織ネーム

VESTではMADE IN JAPANのシャトル式織ネームを看板商品としています。シャトル織ならではの趣のある独特の風合いは、シャトルが通ることで糸間に生まれるわずかな空気層により引き出されると言われています。高効率化を求められる現代において、この風合いを生かしたこだわりのブランドネームを求めるお客様にVESTはシャトル式織ネームをお薦めいたします。

シャトル織はベースと同時にベースとは別の糸でブランド名やグラフィックをジャガード機能で織ります。生地のベースに相当する部分は、ご希望の生地に似せて作成することが出来ます。ベースの基本組織は平織と朱子織の2種類になり、基本のタテ糸は白(白タテ)と黒(黒タテ)の2色になります。織機は平織用と朱子織用で別仕様になっており、タテ糸は白と黒を常に用意してあります。平織のタテ糸は40デニール、朱子織は60デニールで1cm間の糸の本数も違います。織巾は固定されており、9mm 12mm 15mm 18mm 24mm 30mm 36mm 51mmの8種類を設置しております。平織用と朱子織用それぞれに白と黒のタテ糸を用意すると最低32台必要になりますが、人気のある色、巾がありますので、需要に応じて協力工場と連携して対応しております。
 
基本的な織組織はもちろんですが、特殊な織組織(グログラン、諸越、巻耳、二重織 等)や特殊糸(綿糸、毛、麻混 等)の組み合わせでお客様のニーズに合わせた織ネームをご提案いたします。

ベースの基本組織について


平織
平織はタテ糸とヨコ糸が1本ごとに交差する組織です。表も裏も同じ組織になり、特徴は細かいデザインの表現が可能です。ネームの表面はタテ糸とヨコ糸が同じ割合ですので、ヨコ糸がタテ糸と同色以外の場合はシャンブレー調、玉虫調になります。白タテの場合は選んだヨコ糸の色よりも薄く(明るく)なり、また黒タテの場合は選んだヨコ糸の色より濃く(暗く)なります。


朱子織
朱子織はサテンと呼ばれる生地に良く似た組織で、表面にタテ糸が多く現れ光沢がある表朱子と、表にヨコ糸が多く表れヨコ糸の色がほぼそのままネームの色になる裏朱子があります。特徴は平織に比べ、ボリュームがあり高級感がありますが、細かいデザインの表現には向きません。ただし高密度織にすることによって固く厚くなりますが、細かいデザインを表現することは可能です。


素材別織ネームの特徴

①シルク(正絹)ネーム エレガンス、フォーマル商品向け

上品な光沢と風合い、細い糸で繊細な織柄の表現が可能です。
製品染めや洗い加工には向きません。(塩素系漂白剤で溶解します)
単価は同仕様のポリエステルネームに比べ割高になります。
・タテ糸、ヨコ糸、紋柄糸すべてが絹のネーム(ベースは朱子織のみ)
・タテ糸がキュプラ ヨコ糸、紋柄糸が絹のネーム(ベースは朱子織のみ)


②レーヨン(人絹)ネーム ビンテージカジュアル、ワークウエア、ミリタリー商品向け

シルクネームと同様に塩素系漂白剤で溶解しますが、綿用の染料で染まりますので、製品染めしますと同色に染まります。
ポリエステルネームに比べ弱く、洗濯によって縮みが発生します。
単価は同仕様のポリエステルネームと同等です。
・タテ糸がポリエステル ヨコ糸、紋柄糸がレーヨンのネーム(ベースは平織りと朱子織)紋糸が太くドットの組み合わせで織柄を表現すると、よりビンテージ感が表現できます。


③ポリエステルネーム スタンダード商品向け

現在主流になっている素材です。
その理由として織り易さ、加工、取扱いのしやすさ、安定した色糸供給の背景と価格、物性面の安心感が挙げられます。
・タテ糸、ヨコ糸、紋柄糸すべてがポリエステルのネーム(ベースは平織りと朱子織)


④綿ネーム ナチュラルカジュアル商品向け

ベースと紋柄の糸種を分けることによって、あえて染まるネームとしての使い方が出来ますし、ベースは染まっても紋柄(ブランドロゴ等)はしっかり見えます。
綿ベースにすることで肌にやさしくチクチク感を軽減する効果もあります。
・タテ糸、紋柄糸がポリエステル  ヨコ糸が綿のネーム(ベースは基本的に朱子織)ベースの綿糸が表面に多く見えるように裏朱子織にすると、より綿のような風合いを表現できます。


⑤特殊糸ネーム

綿ネームと同様にポリエステルのタテ糸に毛や麻混糸等のヨコ糸を織り込んだネームです。綿番手で30単糸前後の太さの糸を手配出来ればネームにすることができますので、シーズンテーマやコンセプトに沿った織ネームが作れます。
(ベースは基本的に朱子織)


北陸地方における織ネームの歴史

織ネームは1910年頃、イギリスより洋服を高級化することを目的に伝承されました。そして1911年頃、兵庫県尼崎市出身の寺岡氏が西陣の紋機と、1台で同時に数巾を織る装置を組み合わせた織機を考案したことで手織機による織ネーム製造が開始されました。その後1920年代に手織機はすべて動力式に改良されました。北陸地方では元来リボンの生産が行われていたこともあり、その製造経験を生かして、いち早く織ネームの産地として発展しました。
 
1930年代は軍需製品が中心でしたが、1940年代はアメリカから大量の注文が入り、北陸地方全業者が受けても対応しきれない程の大変好況な年代でした。1950年代は織ネーム業界にとって好況、不況を繰り返した波乱に満ちた年代でした。わずか10年あまりの間に織ネーム工場がおよそ5倍に増加し、その影響で過当競争が表面化し、生産秩序が乱れ、混乱状態になり休業する業者が続出しました。それに加え織ネームに使われるレーヨン(人絹)糸相場の暴落、低迷も反映して業界全体が不景気に見舞われました。
 
1960年代に入ると東京オリンピックの影響で景気が回復し、その後日本人の生活スタイルやファッションの欧米化が進んでいきました。そのためカジュアルスタイルが浸透し、ネームの需要は高まっていきました。またこの頃、一般家庭で酸性合成洗剤や漂白剤が使われるようになったため、それまでの織ネームの主流であったレーヨンの多くは脱色等の問題が発生してしまいました。この事態に対処するため、キュプラ、ポリエステルの原着糸を使用するようになりました。これは、織り易さや価格面でのメリットだけでなく、糊付けの手間等のデメリットを回避することにも繋がり、近年においてもポリエステルを使用した織ネームが主流となっています。
 
シルク(正絹)ネーム  = 高級品
レーヨン(人絹)ネーム = 1960年代までの主流品
キュプラネーム     = レーヨンの代替品(現代では少数派)
ポリエステルネーム   = レーヨンの代替品(現代では主流品)
 
また織機については、これまでシャトル織機が中心でしたが、幅広用織機を利用したレピア式織機が導入されて高速化、大量生産化が可能になりました。織柄を表現するためには従来、型と呼ばれる紋紙(厚紙のパンチカードを数十枚繋げたもの)が必要で、作成には時間と高度な技術を要しましたが、PC化が進みデータ化されたことによって工程時間が短縮されるようになりました。